【F東23 vs 秋田】 ウォーミングアップコラム:復活の背番号18 FC東京の象徴・石川直宏が味スタ帰還へ

2016年9月18日(日)

「ウォーミングアップコラム」は、試合に向けてのワクワク感を高める新企画。ホームクラブの担当ライターが、いろんな視点から、いろんなテイストでみなさんに情報をお届けします!
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背番号18が味スタに帰ってくる――。

FC東京U-23は19日、ホーム味スタで秋田と対戦する。その一戦でMF石川直宏が、けがから復帰後初のベンチ入りすることが濃厚となった。復活ロードをひた走る男は、〝我が家〟と呼ぶ場所に足を踏み入れようとしている。

昨年8月2日のフランクフルトとの親善試合で左膝前十字靱帯を断裂。さらに、復帰間近となっていた今夏にも左膝内側半月板を損傷し、全治2カ月の診断を受けていた。出場すれば、公式戦では15年7月29日のJ1セカンドステージ第5節ベガルタ仙台戦以来となる。

葛藤、苦悩、挫折……。そのサッカー半生に栄光の二文字は、決して 大きく描かれることはなかった。いつも、つかみかけた時に急転回し、代わりに凸凹の回り道が用意されてきたからだ。

「けがで語られるサッカー人生なんて嫌でしょ」

ナオは、その度にそう口にしてきた。さわやかな見た目や、柔らかい物腰とは異なり、不器用を絵に描いたような人間だ。特に、若いころは感情の起伏も激しく、揺れ動く中で向こう見ずで無鉄砲な一面もあった。だから、けがを怖れぬ無茶なプレーもしてきた。

ただし、「自分の決断してきたことに、少しも後悔はない」と、言い切る。けがが多いキャリアを恨むのではなく、受け入れてきたのだ。一時を境に正解を求めることを先延ばしにするようになった。視野を広く持ち、『いけるところまでいく』の生き方を貫く 。だから、こんなフレーズが出てくる。

「後先を考えずに、毎日自分にやれるだけのことを精いっぱいやってきた。そうやって一日、一日を過ごしてきた。いろんな葛藤との戦いはある。でもね、結局たどりつくのは自分の望む状態なんだと思う。これまでだってそうだった。またあの場所に帰ろうという思いで乗り越えてきたから」

そう語られた自らの生き方が、今の石川直宏の強さの源なのだろう。

そして、ようやく出口が見えてきた中で、「ここまで順調に来た。だけど、他を痛めるのが怖い。焦りすぎて再受傷することは避けたいが、残りのシーズンを考えるとせめぎ合いはある」と、珍しく慎重な言葉を吐き出していた。

かと思えば、「きっと期待してくれている人がいて 、求められるプレーの要求はすごい高くなってると思う(苦笑)。だけど、それを表現したいよね。今は楽しみで仕方ない。待ってくれていた人たちと、一緒になって喜び合いたいから」と言ってこう続ける。

「誰もが苦労しているし、自分が特別だという風には思いたくない。でも、実際に、いろんなものを乗り越えていく姿に、拍手と歓声を贈ってきてくれた人たちがいた。そういう経験をしている人は少ないのかもしれない。だから貴重なサッカー人生だなって思う。それってプロになった時に自分が目指した姿でもあった。生き様を見せられるような選手になりたかったから」

青と赤の歌唄いたちも準備は万端だろう。タッチラインをまたいだ跳ね馬が刻むピッチに合わせ、お決まりのあのビ ートが刻まれる。ザクザクと身を削る思いで、途方に思える作業を繰り返してきたに違いない。だけど、あの歌と、歓声さえあれば、それさえも吹き飛んでしまうのだろう。ナオは、味スタのピッチに立った自分を想像すると、少し口元が緩んだ。

「いろいろあったけど、そうなったら関係ない。きっと解き放たれるよ、ブワーッてね」

その足元から伸びる一本道は自ら希求した舞台へとつながっていた。それをつなげたのも、35歳となった石川直宏の〝生き様〟があったからこそ、だ。

文:馬場康平(F東23担当)


明治安田生命J3リーグ 第22節
9月19日(月)13:00KO 味スタ
FC東京U-23 vs ブラウブリッツ秋田