【京都 vs 水戸】 ウォーミングアップコラム:下畠翔吾とフィリップ ラーム。頭でサッカーをする選手たち

2017年5月16日(火)


昨年、石丸清隆監督(当時)がシーズン中、練習後の囲み取材の中で、下畠翔吾(写真)のことを「翔吾は諦めない。翔吾は本当にさぼらない」と笑顔で評したことがあった。今季シーズン前、布部陽功監督は下畠を「本当に堅実なプレーをする選手」と評価していた。だが両監督共、下畠の先発起用は積極的ではなく、負傷者が出たための「やむを得ずの処置」だった。彼の特徴を強く認めていた訳ではなかったのだ。

下畠は特段のフィジカルの強さ、或いは、スピードや足下の技術のある選手ではない。だが今、彼の存在が京都の最終ラインに落ち着きを与えている。彼の持ち味とは何かを考える時、引き合いに出したいのが、ドイツのフィリップ ラーム選手だ。

今季限りでの現役引退を発表、世界最高の右サイドバックの呼び声も高いフィリップ ラーム選手。観衆受けする様なテクニックを見せる訳ではないし、フィジカルやスピードで相手を圧倒することもない。だが「判断の速さ」、言い換えるなら「判断の淀み無さ」、この点で、他の追随を許さない。要は、「頭でサッカーをしている」感じを強く受けるということだ。

下畠の「頭でサッカーをしている」部分はどこか、と問われれば、それは「対峙する相手の最後のプレーをやらせない」点となる。相手がシュートを放つか、ラストパスを出すか、或いは、もう一つ持つのか……。相手が何をやろうとしているか、何がしたいのかを見極めようとする。だから、簡単に飛び込まず粘り強いプレーとなる。こうしたプレーを、石丸監督、布部監督とも、高く評価しているのだろう。だがこの下畠のプレーは裏を返せば、「相手を潰すほどの強さがない」ことでもある。

DFに求められる「フィジカルの強さ」や「ボール奪取力」など、「見た目に解り易い特徴」で劣っていた彼にとって、「頭でサッカーをすること」を身につけなければ、プロの世界で生き残れなかったのだ。

フィリップ ラーム選手はバイエルンで、勝つためにボールさばきに必要な観察力を高め、判断の速さを極めた。下畠は、京都で生き残るため、試合で守り切るため洞察力を磨き、状況判断力を高めた。つまり、彼にとっての「頭でサッカーをする」取り組み、それは、マイナス面を補うため、フィジカルの弱さを埋めようとした努力の過程でもある。その取り組みがプレーに現れ、ようやく最近になって、多くの人に認められ様としている。

もちろん、まだ物足りない点も多くある。例えば、昨年の第14節の北九州戦で原一樹にゴールを決められたが、このマークは下畠である。マークを外され、走られてしまい、タックルも不十分でシュートコースが変わり、決められた。原のシュートの瞬間にタックルに入ったのは評価できるが、ブロックの仕方で甘さがあって課題が残った。まだ磨かなければならない所が色々あるのも事実。

だが、彼のプレーの方向性が定まってきたのは、明るい材料と考えても良いはずだ。将来、下畠がどんな選手になるか、楽しみにしたいところだ。

文:武田賢宗(京都担当)


明治安田生命J2リーグ 第14節
5月17日(水)19:00KO 西京極
京都サンガF.C. vs 水戸ホーリーホック