【秋田 vs 北九州】 ウォーミングアップコラム:波瀾万丈の今シーズン、松本拓也は「自分自身との戦い」を制して古巣との対戦に臨む

2017年10月21日(土)



前節の相模原戦では、両チームのGKによるセーブ合戦が試合に華を添えた。

秋田が1点を追いかける展開で迎えた後半開始直後、PAに山田樹が侵入してGK川口能活と1対1の場面を作るも、山田のシュートを川口が防ぐ。秋田のプレーに積極性が現れたことで、相模原も攻撃に転じる。そこに松本拓也(写真)が立ちはだかった。

「DFとボランチの間にぽかんとスペースが空くシーンが多かった。点を取るために攻撃に比重を置くので仕方ないことだし、そこのスペースに無闇に飛び込めないDFの心理状態も分かる。それを踏まえたときに、相手が最後まで崩すこともあるだろうけど、ミドルシュートが増えるかなという予測もありました」

予測どおり、相模原は積極的に打ってくる。松本は千明聖典のボレーやミドルを弾き返すと、久保裕一のシュートでも鋭い反応を見せた。「ファインセーブといってもGKだけで守っているわけではないし、そもそもその(ファインセーブかどうかの)評価は周囲の方にしていただくことですね。それでも崩されるよりはミドルのほうが守りやすいというか、自分としては助かりました」

その後は秋田が主導権を奪い、前山恭平のゴールで同点に追い付く。さらに秋田が押し込む展開となるが、川口も黙っていない。田中智大のタイミングをずらしたシュートを防ぐなど守り切り、互いに勝点1を分け合った。

試合後に松本が自身のTwitterを更新した。「隣の市出身のこの人を見て こんなGKになりたいって憧れ目指しGKやってきたけど、今日の試合後の挨拶でナイスキーパーだよってハグしてくれて、GKやってきてよかったなって。たくさん影響受けたGKはいるけど、能活さんはずっと俺の中ではヒーロー」。

松本が磐田ユースに所属していた2005年に、川口が磐田のトップチームに加入した。「いちばん脂が乗っているときの能活さんを近くで見ていますし、もちろんその前の活躍も見ています。その頃に比べると正直スピード感は落ちたと思いますけど、そのかわりムダがない。僕らはスピードがあったとしてもムダな動きが多かったりする。試合中、いちばん遠いところから能活さんを見て『ムダがないなあ』と思っていました」。川口が相模原に加入したことで挨拶をする機会はあったが、プレーを讃えられたことは初めてだという。松本は「鳥肌が立ちました」と喜びを隠さない。

振り返ると松本にとって2017シーズンは、なにかと縁のあるチームとの対戦が控えていた。J3リーグでは2013〜2014シーズンにかけて在籍したギラヴァンツ北九州がJ2から降格し、生まれ故郷の沼津を本拠地とするアスルクラロ沼津がJFLから昇格。天皇杯2回戦では、2011年〜2012年に在籍した湘南ベルマーレが待ち構えていた(天皇杯1回戦で秋田が敗れたため対戦は実現せず)。川口とのエピソードもそのひとつに含まれるだろう。

しかしシーズンが始まった直後の1月下旬、松本は右手中手骨を骨折し全治2ヶ月の重症を負う。開幕戦は奇しくも3月12日、アウェイの北九州戦だった。結果的に開幕戦では小澤章人がゴールマウスを守る。担当医から「この(骨の)折れ方で、このスピードで治ったのはすごい」と言わしめた早さで回復し、第5節の鳥取戦以降はベンチ入りする。しかし小澤が高いパフォーマンスを発揮したことや、チームが連勝を続けていたことなどから、ほとんど出番がなかった。

試合に出られないなかでのメンタルについて松本はいう。「大変でした。普通にしているように見せることがどれだけ大変だったか、と。強がるわけではないけど、大変さを表に出したところで何もならないし、チームにはマイナスの部分しか残らない。自分にうまく嘘をつくというか、あえてありがちな言動をすることで、自分の心境をごまかす。自分を客観的に見て、こういう自分を表に出したほうがいいという自分を無理やり持ってくる感じ。このバランスが本当に難しかったです」

松本が初めてスタメンに名を連ねたのは、約1ヶ月の中断期間を経た第20節のG大阪U-23戦。「タイミングがあるとしたらここ(中断期間)しかない」と集中した。「出番についての危機感はありましたが、それがプレッシャーにはなりませんでした。それでダメならダメだと。開き直りではなく、割り切りです」

その後、松本は継続して出場機会を得られている。その一方でチームはここ5試合勝ちがなく、失点も続いている。「いま誰しもが苦しんでいるのは、結果が出ていた前半戦とのギャップだと思います。だからこそここからは、自分自身との戦いになる。もちろん相手もあってのことですけど、相手ありきだと後手にまわる。チームの選手一人ひとりが、自分の力でどうにかして戦わないといけない」と力を込める。松本は前半戦の出場機会こそ限られていたが、自身の心と向き合いチームに貢献してきた。これからもその姿勢を続けていく。

残り7試合の結果にJ3優勝がかかる状況で、次節は北九州戦。池元友樹や内藤洋平といった、かつての先輩や同僚との再会を楽しみにしつつ「選手の質が高いので、個の部分でやられたくないですよね」と引き締めている。

文:竹内松裕(秋田担当)


明治安田生命J3リーグ 第28節
10月22日(日)13:00KO A‐スタ
ブラウブリッツ秋田 vs ギラヴァンツ北九州