【広島 vs C大阪】 ウォーミングアップコラム:もはや彼は「エンジン」から脱皮した。青山敏弘、日本代表の誇りをもって、ピッチに立つ

2018年5月19日(土)


まだワールドカップ日本代表が決まったわけではない。西野朗監督はガーナ戦の27人からロシア行きの切符を握る選手を選出することが基本線であると語っているが、もしそうであったとしても4人は涙を呑むことになる。ましてロシアに行ったとしてもそこで活躍し、日本のために働いてこそ、意味はある。青山敏弘(写真)の日本代表入りは3年ぶりだとしても、初めてではない。まして彼は4年前、ワールドカップの場所に立っている男だ。久しぶりの日本代表復帰に歓喜する必要もない。

だが、彼が日本代表に選ばれたという一報が流れた時、チームは活気に湧いた。青山をよく知る人々の間には、涙を流す人もいた。本当によかった。嬉しさが溢れ出た。
その理由は、ブラジルワールドカップからここまで、青山が歩いてきた道程にある。
2014年、ブラジルから戻ってきた青山は腰痛に悩まされ、不調をかこった。2015年はMVPに輝く活躍を見せたが、シーズン前半はやはり難しいプレーが続いた。そして2016年から2年間、青山の不調は明白になる。腰痛の慢性化もあった。だが何よりも厳しかったのは、「エンジン」と称されたほど動いた自身の身体が思うように動かなくなったこと。前十字靱帯断裂、二度にわたる半月板損傷と手術。若い時に繰り返した大怪我の数々を乗り越えんと身体を鍛え上げ、ストイックなほどに鍛え上げた肉体は悲鳴をあげ、機能性を失った。
「動けない、走れない。どうすればいいんだ」
自身の「衰え」を肌身で感じ、悩み、悩み、そして悩んだ。周りは「エンジン青山」を期待する。一発で局面を変える「青山らしさ」を求める。しかしもう、彼の身体は期待に応えられない。周囲の、そして自分自身からの期待に押し潰されるように、昨年の彼は沈み込んだ。チームの不振がそこにリンクしたことで、青山はさらに自分を責めた。昨年のプレーを、彼はほとんど覚えていない。現実を直視できないほど、身体も精神も傷ついた。

しかし今年は違う。池田誠剛フィジカルコーチとの二人三脚によって、身体は自身が試合中に感動するほど、動き始めた。城福浩監督によってボランチの仕事が整理され、今までとは違ったスタイルのプレーに取り組み始めた。バランスをうまくとり、ゲーム全体を俯瞰しながら、走るべき時は走り、止まるべき時に止まる。そういうプレーが的確にでき始めた。以前のエンジンではない青山敏弘が、2018年の広島を牽引。そこを認めてくれたのが、西野朗日本代表監督だった。
「Jリーグで結果を出せば代表にも選ばれる。そういう現実が間近に存在するということは、チームにとっても喜ばしいこと」と語った城福監督は、こんな言葉を口にした。
「何歳になっても成長できるし、評価もされるということ。そして、過去の栄光に満ちた自分に戻るというよりも、もう一度(サッカー選手として)生まれ変わり、新しい自分を勝ち取りたい。そんな強い意識が青山の学びたいというエネルギーの源泉になっている」

苦しんで、苦しんで、苦しみぬいて。その結論として、過去の自分に訣別し新しい自分自身を確立させた、その姿が新しい評価を生む。青山敏弘の代表復帰は、そういう物語の向こう側で生まれた成果だ。快哉を叫んで当然だ。
「代表復帰の知らせを受け、胸の奥底から噴き出す熱いモノを感じた」
青山敏弘の言葉を記す。
「どんな難しい状況にあっても、日本代表への復帰だけは、手に伸ばしてつかみとろうという意欲は失わなかった。諦めることはできなかった。4年前、コロンビアに負けた時、海外でプレーしないと世界との差は縮まらないと実感。でも、僕は広島で成長し、広島に育ててもらった男なんです。広島だからこそ成長できる要素もある。それを成果で示したい。もちろんワールドカップは成果を示す場ではなく、勝利をつかむ場所。広島を代表し、Jリーグを代表して、日本を代表して(世界の舞台で)戦いたい。Jリーグの選手であっても23人のワールドカップ代表に入り、スタメンをつかみ取る力をもっていることを証明したい」

柏好文や和田拓也ら、チームメイトたちも「勝って、日本代表に送り出したい」と意気込む。紫のサポーターもまた、同じ思いでスタジアムに詰めかけてくれる。力強い声援とコールと拍手で、青山敏弘という素晴らしいキャプテンを送り出す準備は、できている。

文:中野和也(広島担当)


明治安田生命J1リーグ 第15節
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