【町田 vs 栃木】 ウォーミングアップコラム:J1ライセンス取得なくしてクラブの未来なし。ゼルビアの未来を想う深津康太の言葉

2018年7月6日(金)


アイスランド代表はロシア大会でワールドカップ初出場を果たし、アルゼンチン戦の引き分けにより世界を驚かせた。そんな彼らの躍進を説明する記事を読んで、自分は少し複雑な気持ちになる情報を見つけた。それは「人口35万人の小国に、天然芝のピッチが148面ある」というデータだった。
 
町田市は人口約43万人の都市だが、自分の知る限り天然芝のピッチは2面しかない。一つはFC町田ゼルビアが試合を行う町田市立陸上競技場。もう一つは「キヤノンスポーツパーク」のメイングラウンドだ。
 
そんな街のJクラブであるゼルビアは今季の前半戦を終えて3位と好調だ。ゼルビアは予算的にはJ3でも不思議の無い規模で、J2では唯一の「人工芝で練習する」クラブだ。そんな環境の中で、監督と選手が称賛に値する戦いをしている。
 
深津康太(写真)は現在33才のセンターバックで、ゼルビアの最古参だ。2009年のJFL時代にこのチームへ加入し、東京ヴェルディでプレーした2年を経て13年に復帰した。今季で通算8季目の在籍となる彼はこう口にする。
 
「ウチのチームは今年6位以内という目標があるけれど、前半戦を本当にいい形で終えることができた。すごく自信を持っていいと思う。ただ後半戦は同じようにやったら勝てない。今のベースを崩さずに、個のレベルをあと一歩でもいいので上げて、走りや球際はあと1センチを求めてやっていかなければいけない」
 
その上で彼は「ピッチ外」の問題についてこう訴える。
 
「6位以内がチームの目標ですけど、僕たちにとってはこの順位にいればグラウンドなどの問題で街が動いてくれるんじゃないかというのが大きい。クラブハウス、天然芝などの環境が変わってくるのではないかと必死です」
 
J2は2位以内に入ればJ1への自動昇格が決まる。6位以内に入れば昇格プレーオフに参加できる。しかしそれはJ1ライセンスの保持が前提で、ゼルビアの環境が現状のままだとJ1にチャレンジする権利はない。
 
J1ライセンス取得に向けては二つの大きな課題があった。一つは1万5千人収容などの条件を満たすスタジアムの整備。その部分は工事開始に向けて議会の審議が進み、入札などの日取りも決まっている。
 
ただし「練習場とクラブハウス」については課題が残っている。これが土地の売買もしくは貸借、クラブ側の資金負担など、込み入った調整の必要となるテーマであることも事実。一方で2016年のJ2で快進撃を見せ、ライセンス問題に焦点が当たった頃から、話の進んでいる様子が見えてこない状況は確かに気がかりだ。
 
天然芝は足首や膝、腰への負担が軽く、高いレベルで追い込んだ練習をするフットボーラーならば当然あるべき環境だ。もちろん首都圏は土地の制約があり、耐久性やメンテナンスを考えれば育成年代などが人工芝で代替せざるを得ない現実も理解できる。とはいえ、この街にせめてあと1面、天然芝のピッチを用意できないものだろうか――。
 
そうすれば選手の“職場環境”は劇的に改善し、J1ライセンス取得に向けた大きな助けになる。クラブはおそらく投資に見合った、より大きな価値を町田市に還元できる。
 
ゼルビアは2015年にJ2再昇格を果たし、相馬直樹監督の下でJ1を伺える実力を身に着けている。選手が十分ではない環境の中でこのチームに在籍してくれるのは「もうすぐ良くなる」という希望を持っているからだ。一方で今この機を逃したら成長軌道は止まり、才能も徐々に離れ、J2に居続けることさえ難しくなるだろう。
 
深津はJFL時代に「働きながらサッカーをする」生活を経験していて、当時の練習環境は今より悪かったという。しかし彼はゼルビアと長く関わってきたからこそ未来への思いが強く、「後戻り」に甘んじるつもりはない。飛躍と停滞の分かれ道にいるクラブの現状に危機感を持っている。
 
深津はこう言い切る。「今は前に進んでいかなければいけない。昔に比べればとてもいいけれど、このままじゃ絶対ダメ」
 
前半戦の戦いについて聞くつもりで始まった会話は、クラブの未来へと膨らみ、気づくと熱を帯びていた。筆者はJ1で戦うゼルビアを見たいし、深津にもう一度J1のピッチを踏ませてやりたい。非力な自分に何をできるのかは分からないが、今はまず深津の思いを市民に届けたい。

文:大島和人(町田担当)


明治安田生命J2リーグ 第22節
7月7日(土)18:00KO 町田
FC町田ゼルビア vs 栃木SC
町田市立陸上競技場(FC町田ゼルビア)
みんなの総合評価 (3.6)
臨場感 (3.1)
アクセス (2.1)
イベント充実 (3.7)
グルメ (4.0)
アウェイお楽しみ (3.5)

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