【名古屋 vs 長崎】 ウォーミングアップコラム:復調傾向のエドゥアルド ネットは現実を見る。8連勝と残留争いからの脱却に、その左足は欠かせない。

2018年9月14日(金)


“難敵”との戦いは優勢に進んでいるようだ。2週間前に行われた磐田との前節で、エドゥアルド ネット(写真)は87分間の出場時間をしっかりとプレーし、6-1の快勝に大きく貢献した。名古屋でのデビュー戦となった17節広島戦で右足の付け根を痛めて以来、治療とリハビリ、そして制限付きの試合出場を続けてきた助っ人にとって、コンディション調整はもう一つの戦いだっただけに、「今季中に100%にするのは難しいけど、改善されてもきている」と感じられるまでに回復した現状は実にポジティブである。

極上のテクニックを操る名古屋のゲームメイカーは、そのプレーの軽快さからは想像もできないほどに現実主義だ。7月の飛騨古川キャンプでチームに合流した際に「こんなに強いチームがなぜこんな状況にあるのか」と感じ、「早くこの苦しい状況から遠ざかりたい」と危機感もあらわに第一歩を踏み出していた。リーグが再開し、チームが連勝街道に乗って最下位を脱出した際にも、「光は見えたけど、まだ落ち着けはしない状況だよ。ここで油断してしまうとすべてが終わってしまう」と手綱を緩めることを決してしようとはしなかった。美しいパスとトリッキーなプレーの印象が強い選手だが、やはり中盤の底を務めるだけあって状況判断に抜かりはない。浦和に勝って6連勝を決めた時でさえ、「まだ降格圏に3ポイントしか差がないから余裕なんて持てないよ。1試合1試合を大事にして、かなり降格圏から離れることができて初めて安心できる」と言ったほどだ。

前節で7年ぶりの7連勝を達成したチームにとって、そうしたネットの状況判断はもはや欠かせないものになってきている。後方からのビルドアップは必ずと言っていいほど彼の足元を経由し、中盤から前線へ攻撃をスピードアップするためのしかるべき位置へとボールが運ばれていく。「自分に求められているのは後ろでしっかりと守備をして、ボールを大事に攻撃陣へと運んでいくこと」という彼の言葉通りの流れだが、単なるパス出し役に終わらないのが彼の真骨頂だ。同僚の前田直輝は「ペナルティエリアの幅で仕掛けて、そこにボランチが入ってくればチャンスが山のようにあるチームになれる」と語っているが、ネットはその役割もしっかりこなすだけのキャパシティーを持っている。24節の鳥栖戦では速攻の流れからペナルティエリアに侵入し、和泉竜司のゴールをアシストし、前節の磐田戦でもジョーの1点目の起点となるパスを出した位置はペナルティエリア付近だった。相手陣でサッカーをするという基本的なテーマを持つ名古屋だが、ネットがそんな場所に出没するようになれば、それはもはや「ペナルティエリアに押し込む」という次元の話になってくる。

長崎戦を想定する時、名古屋の選手に「相手はガチガチに引いて守ってくるのでは」という見方は強い。客観的に見ても、リーグ5連敗中の最下位が7連勝中のチームの本拠地に乗り込むにあたって、カウンターにすべてをかける戦いを仕掛けてくるというのは定石だろう。ネットも「相手が90分守ってくるような試合になるかもしれない」と想定しており、その上で自分たちが取るべき姿勢を次のように語った。

「対策としてはまずは我慢すること。相手が90分間守っているような試合になるかもしれないし、それに対するサッカーも準備しておかないといけないかもしれない。あらゆる状況において、我々が準備しておくことは多いけど、相手の隙ができる時を待ち、チャンスを作ってゴールにつなげていけばいい。我々は相手を崩すことについて自信をつけてきたし、練習も攻撃のトレーニングがものすごく多い。そこにチームの成長も感じていますからね」

最後は少し焚きつけてみたのだが、やはり威勢のいい言葉は飛び出さない。ネットは根っからのボランチなのである。しかしそれだけに今節を重要視している部分もあり、「次の勝点3はチームにとってとても重要なものになる」という言葉には力が入った。怒涛の連勝によってチームの勝点は31にまで増え、一般的な残留ラインがかなり近づいてきた。しかも相手は残留争いの当事者である長崎で、勝てば降格圏を遠ざける意味でも非常に大きなものになる。「安心するのはすべてが確実になってから」と慎重な姿勢を崩さないネットが「重要なものになる」と言うのだから、なおさらにその印象は強くなる。

ただし観ている方としてはネットには純粋に、いつもの軽妙洒脱なパフォーマンスで沸かせてほしいもの。スルーパスやフィードのタイミングは日に日にチームメイトと合ってきており、「ネットはいつも見ていてくれる」(和泉)と感覚を共有できる仲間も増えてきた。ゆったりとした動きから繰り出される予想外のパスがどこで、どんなチャンスを生んでくれるかは今の名古屋を観るうえでぜひ注目しておいてほしい部分だ。リーグ8連勝とさらなる降格圏からの逃避は、エドゥアルド ネットの思慮深い左足によっても導かれる。

文:今井雄一朗(名古屋担当)


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