【広島 vs FC東京】 ウォーミングアップコラム:危機的な状況であっても100%のパワーを発揮する 最強のメンタルを持つ稲垣祥の牽引力

2018年9月21日(金)


必ず、稲垣祥(写真)はチームを救ってくれるだろう。
足立修強化部長(広島)が彼の獲得を決めた時、そう言ってくれる人がいたという。そして、その言葉は現実となった。
 
昨年、広島は絶望の淵にいた。残り3試合を残して自動降格圏の16位。第29節から3連敗を喫し、残り試合全てで勝利が求められていた。そこで輝きを見せたのが、中盤戦までベンチ入りメンバーからも外れていた稲垣だった。第32節対神戸戦で強烈なヘディングシュートで先制弾をゲット。第33節FC東京戦では1−1の状況で美しいループ状のシュートをゴールの中に吸い込ませた。そしてこの試合で勝利を決めた直後、J1残留確定の朗報がエディオンスタジアム広島に届く。ヒーローは誰が見ても、稲垣だった。
 
甲府時代の恩師である城福浩監督が就任した今季は、開幕から絶対の信頼を確保している。欠場したのは連戦中でターンオーバーが採用された第7節対横浜FM戦のみ。途中出場も第10節の対FC東京戦だけで、それからは全試合先発。途中交代も1試合しかない。攻撃に出る時も守備に入る時も欠かせない。ボランチに吉野恭平が入ることも多いのだが、その時には彼をサイドハーフ、あるいはサイドバックに城福監督はスライドさせる。甲府時代はトップ下でプレーした経験もあり、チームで最もポリバレント(多様性)な選手だと言っていい。
 
どうして稲垣は、チームを救ってくれるのだろう。
 
当初は、その言葉の意味がわからなかった。確かに、運動量は豊富だし球際も強い。だが、ボールを奪った後の技術やボール保持などの判断については、まだまだ成長の余地を残している。ボールを失い、カウンターの脅威にさらされることもある。ボール扱いの技術について彼を上回る選手はチーム内でも多い。
 
しかし、長くずっと見続けると、稲垣がどうして監督の信頼を勝ち取ることができるのか、チームを「救う」ことができるのか、なんとなくではあるが見えてくる。彼は「計算できる」男なのだ。例えば昨年の残留争いの時も、今の優勝争いでも、メンタルは変わらない。「プレッシャー?特には。しびれる感覚もない」と稲垣は言う。それは昨年も同様だったし、今季も常に精神面が安定している。
 
常に落ち着いているから、自分自身を冷静に分析できる能力も高い。自身ができることもできないことも明確にわかっている。できないことに手を出さず、できることに対して100%の力を注ぐ。メンタルが安定しているからプレーの質も変わらない。できること・できないことが明確だから、起用する側にしてみればプランが立てやすくなるわけだ。
 
その上、稲垣には重要な試合での爆発力がある。第2節・対浦和戦での強烈なシュートで逆転勝利に貢献し、勢いをつけた。第24節、C大阪を沈めたミドルシュートも、その前の川崎F戦で今季初の逆転負けを喫して危機感に包まれたチームを救った。昨年も、そして今年も、彼のゴールで広島は何度もピンチから救われている。
 
今、FC東京は6試合連続勝ちなし、3試合で1得点という厳しい現実を背負っている。だからこそ「相手チームにどういう変化があるかわからないし、開き直りもある。そういう意味では気持ちの入ったゲームになる」と稲垣は言う。
 
「でも、どんな相手であっても、モチベーションで負けることはない。しっかりと地に足をつけてやれるチームでありたいと思っているから」
 
城福監督の言う「靴1足分の寄せ」を体現する背番号15の存在。現在、FC東京戦2試合連続ゴール中の稲垣祥こそ、広島を栄光へと導く羅針盤である。

文:中野和也(広島担当)


明治安田生命J1リーグ 第27節
9月22日(土)19:00KO Eスタ
サンフレッチェ広島 vs FC東京
エディオンスタジアム広島(サンフレッチェ広島)
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