【新潟 vs 熊本】 ウォーミングアップコラム:視線の先にゴールを捉え、川口尚紀はクロスを上げる

2018年11月2日(金)


1週間前、FC町田ゼルビア戦の56分。CB広瀬健太から右サイドにグラウンダーのパスが出る寸前に、右サイドバックの川口尚紀(写真)はタッチライン際を駆け出した。パスの経路上には右サイドハーフの戸嶋祥郎がいて、どういうコンビネーションが生まれるかは分からなかったが、そこに突くべきスペースがあったからだ。

「自分は、たまたまそこに立っていただけ。尚紀さんが良いタイミングで走り出したのは分かっていた」という戸嶋は、ボールをスルー。だが、このワンプレーがあったからこそ、「相手の左サイドバックの選手が祥郎に食いついて、よりスペースが空いたんです」。相手陣内に入ってボールを受けたとき、川口の目の前の視界は、すでに大きく開けていた。

ボールを運んだのは、ペナルティエリアの右の脇だ。中を見ると、ニアサイドに走り込むFW河田篤秀と目が合った。後は、落ち着いて河田の足下にグラウンダーのクロスを送り込むだけだった。

川口が、サイドの深い位置を取ろうと判断できたのは、片渕浩一郎監督が選手に求める「Dエリア」、ディープエリアを意識していたからだ。感覚的には実際にクロスを送った位置よりも、さらに奥のゴールラインぎりぎりのところがDエリアだという。だが、この場面ではそこまで運ぶ必要がなく、クロスを上げようと川口は決断した。

相手サイドバックの背後を取るのは定石だが、片渕監督の“用語”は、選手により明確な共通のイメージを持たせている。川口のクロスボールは、さらに別の共通イメージに連鎖する。クロスを受けた河田は自らシュートを打つつもりだったが、背後、ファーサイドから左サイドハーフ渡邉新太の「スルー!」という大きな声が聞こえてきた。河田の目の前で2トップを組む田中達也が走り抜け、相手DF2人を引き付けたことも効果絶大だった。ニア、ファー、そしてマイナス。クロスに対して3人目の動きを怠らないことも、片渕監督が求めることの一つである。

町田戦が始まる時点で、河田と渡邉新はともに8点ずつ。チーム最多得点者で並んでいた。河田は「これで新太は9点目か、と思いながらスルーしました(笑)」。受けた渡邉新は、ボールをコントロールして右足を振り抜き、ネットに突き刺した。

町田はJ2優勝に向かって必勝の構えでビッグスワンに乗り込んできた。予想通り激しい攻防で、一進一退の展開が続く中、貴重な先制ゴールは川口のクロスから生まれた。さらに渡邉新は直後のPKも決め、2-0で勝利したチームは2連勝。5連勝を含む9戦負けなしとした。

川口を新潟ユース(現U-18)ユース時代に指導した片渕監督は、そのポテンシャルを高く評価し、現在の負けない戦いがスタートした第31節愛媛FC戦から、右サイドバックとして起用し続ける。「ランニングのコース取りは、“こういうのもあるし、こういうのもあるよね”と、こちらから提示はします。でも、それを実際に試合の中で選択するのは、尚紀自身。もともとFWということもあって、攻撃のセンスはある」。

もともと、誰にも負けないスピードという武器が川口にはある。ユース時代からそれを知る片渕監督の下、スピードを生かすランニングのコース取りも、ボール保持者の外側を回るオーバーラップに限定されず、インナーラップの選択肢も与えられ、プレーの自由度を一気に広がった。現在、左サイドバックでプレーするのは、こちらも新潟のアカデミー出身で、前橋育英高校から加入1年目の渡邊泰基だ。ゴールから逆算するプレービジョンを仲間と共有して、新潟の両翼が勢いを加速させ続けている。

文:大中祐二(新潟担当)


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