【横浜FC vs 大分】 ウォーミングアップコラム:武器は“強さ”と“優しさ”。チームが苦しいときこそ輝く瀬沼優司の流儀

2018年11月3日(土)


瀬沼優司といえば昨年6月17日のJ2第19節、横浜FCホームで迎えた山形戦を思い出す。一進一退の攻防の果て0−0のままアディショナルタイムに入り、横浜FCはホームで勝利を挙げるため山形を押し込んだ。もう一押しでゴールをこじ開けられそうな展開。しかし山形は、横浜FCのCKから怒涛のロングカウンターを繰り出す。自陣ペナルティエリア手前で跳ね返したのは瀬沼であり、横浜FCのペナルティエリア内でゴールネットを揺らしたのも瀬沼だった。時計は90+5分。その最も苦しい時間に全力で約80メートルを駆け上がって勝点3を奪っていった姿は、まだ脳裏に鮮烈に焼き付いている。

その瀬沼が今夏、横浜FCに加入した。185cmの長身で競り合いに強く、ゴール前に入っていく迫力はイバや戸島章ら190cm級と比べても遜色はない。最大の武器は既に述べたその走力で、攻守において90分間スプリントを繰り返す。敵にすると厄介だが、味方にすればこれほど頼もしい存在もない。かつて清水で共にプレーしたカルフィン ヨン ア ピンは言う。
「清水ではデビュー戦で残り5分くらいで出ていきなりゴールした。その次の試合でもゴールして、あんなラッキーなヤツは見たことなかったよ(笑)。もちろん技術がないとゴールは決まらないけど、今はもっと上手くなってるね。いろんなクラブを渡り歩いて、強くなった。チームに必要なときに声をかけて、カツを入れてくれる数少ない選手。勝ちたい気持ちを強く持っている」

横浜FCではイバとレアンドロ ドミンゲスの2枚看板の前に出場時間は多くはないが、「スタメンで出る選手、途中から出る選手、それぞれに役割がある。だから『あまり出られていない』とは思わない。途中から出たときにどれだけチームのために勢いを与えられるか。それだけを考えてやっています」。 前節の徳島戦では、負傷した野村に代わって67分にピッチに入り、ボランチの位置でプレーした。低い位置でのプレーであり、時間帯も考え、「まずは守備でしっかり貢献」しながら、攻撃ではクロスの場面でペナルティエリアに入り、また守備になったら全力で帰陣した。その献身性がどれだけチームを助けたことだろう。「寄せの一つ一つをサボらないとか、目立たない地味なプレーだけど、そういうプレーを徹底して続けることで僕はこの世界に生き残ってきました。それは僕にとって譲れないプレーなので」と、1−0での際どい勝利に胸を張った。
もちろんFWである以上、ゴールこそが最も期待されている。チームを助けるために「最高なのはゴールを取ること」だと瀬沼自身も分かっている。第35節の山口戦では勝利に結びつかなかったが、横浜FCでの初ゴールを決めた。チームが一番苦しい時間帯に仕事をしてくれる男だ。昨季リーグ戦で9ゴールのうち、アディショナルタイムの得点は3つ。しかもすべてが決勝ゴールだった。

そのゴリゴリとした走りとは裏腹に、そよそよとしたソフトな語り口にファンも多い。ファンサービスも丁寧で、「ナイスガイなのは清水のときから変わらないね」と再びヨン ア ピン。「昨日もクラブハウスにクモが出て、俺がちょっとびっくりしてたらセヌがそのクモを捕まえてどこかにやってくれたよ(笑)」とエピソードを明かす。その生来の優しさが、チームへの献身性となって表れているのだろう。
チームが劣勢にあるときに、前線で1人張っているような仕事は彼には向いていない。走力を惜しまず味方を助けに戻る。そしてボールを奪い返したらまた前線に駆け上がる。その献身へのご褒美としてゴールがある。強くて、優しくて、味方にするとこれほど頼もしい存在もない。
J1まで残り3試合。今節、横浜FCは首位の大分を相手に、大エースのイバや野村らここまでチームを引っ張ってきた主力を欠いて戦う。スタメンであろうと、途中出場であろうと、瀬沼優司はチームを助けて全力で走り周り、チームの勝利のためにゴール前に飛び込んでいくはずだ。

文:芥川和久(横浜FC担当)


明治安田生命J2リーグ 第40節
11月4日(日)14:00KO ニッパツ
横浜FC vs 大分トリニータ
ニッパツ三ツ沢球技場(横浜FC)
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