【広島 vs 仙台】 ウォーミングアップコラム:情熱と冷静の間に立つバランス 和田拓也の存在が、広島の希望になる

2018年11月9日(金)


和田拓也のポジションは右サイドバックである。だが、彼のプレーエリアはサイドバックという枠に収まらない。外に開くし中にも切り込む。ボランチでのプレー経験もあるからか、ゲームの流れの中でどう動けばいいか、冷静に判断できる特質を持つ。

たとえば前節の対磐田戦で彼が決めたゴールだ。この時、磐田の左サイドの裏をパトリックがとり、ボールを収めた。

「最近はここでクロスを入れて、中の人数が足りていないというシーンが少なくなかったんです」

そう感じていた和田はパトリックをサポートするポジションをとって、バックパスを引き込んだ。

「1度、相手を押し込んでボールを戻せば、スペースができる」

その言葉どおり、フリーになった和田はPA内に侵入した川辺駿にパスを出す。秀逸なのはこの後だ。和田はパスを出した後、そこに止まらない。プレーの流れを読み、中へとスタートを切る。ボールは川辺からゴール前に飛びこんできた柏好文を経由してティーラシンへ。シュートを撃つか。いや、Jリーグに馴染み、周りが見え始めたタイの英雄は、誰がもっともゴールに近いのかを知っていた。中に飛びこんできたのは、右サイドバックの和田拓也。誰もが驚く自在の動きによって、見事にゴールを陥れたのだ。彼が決めたこのゴールの素晴らしさは、パスの流れの美しさは当然なのだが、パトリックのサポートに動いた和田が状況をしっかりと見極めてクールに次のポジションをとったことにある。

もし勝利していたならば、今季最高の美しいゴールとしてサポーターの称賛を受けただろう。だが試合は60分過ぎから暗転し、運動量も落ちた広島は磐田の猛攻に逆転を許した。これで4連敗。しかも失点が4試合で9失点と前半に見せた堅守の面影はない。

だが、和田には動揺が全く感じられない。

「守備で大きく何かが崩れているという印象はないんです。もちろん、最後のところで何かが足りないのかなとは思いますが、勝っている時だって相手にチャンスを与えていることもあるし、シュートを外してくれて助かった場面もある。(サッカーの)難しいところですね」

今の広島に必要なのは、和田的な冷静さであろう。情熱はそもそも、このチームの伝統である。そこに冷静さをいつも持ち込んでいたのが、今季限りでの引退を表明した森﨑和幸であった。

勝利するチームは常に情熱と冷静の間に存在する。クールなだけでは、物事は前に進まない。熱過ぎては、空回りしてしまう。森崎のように試合やプレーを俯瞰して見つめ、やるべきことを冷静に選択できる和田拓也の存在が生き生きと感じられれば、苦戦が続く広島にとっての希望となる。

「仙台は3バックだけど、特別な違和感はない。相手が引いても食いついても、やりようがあると思っています。優勝のチャンスもまだ残っているし、一つになって戦えれば」

淡々と言葉は繋がる。だが、和田拓也の「淡々」の裏側には、冷静な計算と青々と燃える強い情熱が存在する。情熱と冷静のバランスがとれた男に、再起への希望を託したい。

文:中野和也(広島担当)


明治安田生命J1リーグ 第32節
11月10日(土)14:00KO Eスタ
サンフレッチェ広島 vs ベガルタ仙台
エディオンスタジアム広島(サンフレッチェ広島)
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