【相模原 vs 鹿児島】 ウォーミングアップコラム:現役ラストマッチに挑む川口能活は感謝を胸にピッチに立つ
2018年12月1日(土)
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ついにこの日がやってきた。今節・鹿児島戦は川口能活(写真)にとって現役ラストゲーム。25年のプロキャリアに自身で華を添えるべく、14試合ぶりの先発が濃厚である。
11月4日の第30節・YS横浜戦後に引退を発表すると、その10日後の14日に引退会見を実施。160名以上の報道陣に見守れる中、これまで支えてきてくれた家族や指導者、在籍したクラブやチームメイトへの感謝の気持ちや思い出を振り返り、最後は大きな拍手の中で会場を後にした。あの一瞬だけでもどれだけの人々に愛されてきたのかが伝わってきた。
その引退会見の中で印象に残った言葉がある。それは「自分にとって川口能活というのはこの1、2年なんです。自分が代表やJ1でプレーしていたときの川口能活は過去のものなんです」という言葉。川口と親交のある柏のGK中村航輔も「あれが驚きでしたね。相模原での最後が川口能活だったという言葉が。そういうときになれば俺も分かるかもしれないけど、普通は『あの時がさ…』みたいに良い時期のことになるじゃないですか。能活さんも最後はJ3だったわけで今年もそんなに試合に出られているわけではない中で、それが自分という言葉には、ちょっと分かんないけど何か感じましたね」と話しており、後日、その真意を本人に確かめていた。すると、川口は少し驚いた顔をしながらこう返してくれた。
「あの言葉は自分でも何か言おうと思って出てきたわけではなくて勝手に出てきた。もう代表選手でもなく、“相模原の川口能活”として引退したのにあれだけの人が自分のために集まってくれるとは思っていなかったから」
決して相模原での3年間は順風満帆ではなかったはずだ。16シーズン、17シーズンはケガの影響もあり開幕スタメンを外れ、今季は開幕から4試合連続で出場するも、その後はルーキーの田中雄大にポジションを奪われた。「実はこの1、2年くらいはプレーを続けるか、引退するかの狭間で揺れていた」と引退会見でも話していたが、ただ、それでも現役にこだわったのは「サッカーが大好き」だったから。その一言に尽きるだろう。
相模原の3年間を取材させてもらった者としてはJ3の舞台で懸命にプレーしていた姿はとても印象に残っているが、実はそれ以上に心に残っている姿がある。それは練習場での姿だ。
試合から遠ざかっていた時期に若手中心のゲームに交じり必死にボールに食らい付く姿や居残りのシュート練習にいつまでも付き合う姿。そして暑い夏の日も大雨の日でも寒い日でも関係なくコンディション維持のために1人で黙々と走り込む姿。さらには、ロッカーやシャワーの付いていない練習場では車の影に隠れ着替えていた姿。
そのすべてが川口能活であり、この3年間、誰よりも川口能活がサッカー小僧であった。
そして迎える現役ラストゲーム。様々な人の多くの思いが交錯する中、「特別な試合にしたい」と話す川口は「感謝の気持ちを持って」Jリーグ507試合目のピッチに立つ。
文:須賀大輔(相模原担当)
明治安田生命J3リーグ 第34節
12月2日(日)13:00KO ギオンス
SC相模原 vs 鹿児島ユナイテッドFC
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